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音楽の大切な要素のひとつ「リズム」。
そう一口に言っても、リズムは音楽の中で色々な役割を持っています。
また、リズムを語るときに良くキーワードとして登場する「グルーブ」や「ノリ」という言葉。
これらも良く使われる割には中々適切な説明をするのが難しいものです。
今日はリズムの役割を考えると同時に「グルーブ」についても考えてみたいと思います。
【動画で第6回の内容を見る】 |
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まずは次の2つのサンプルを聴いてみてください。
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リズムサンプル6a1 |
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リズムサンプル6a2 |
この2つはドラムのハイハットシンバルを叩いているものですが、聴いた感じの違いは感じてもらえたでしょうか?
前者が無機質な感じなのに対して、後者は有機的な感じがしませんか?この違いは何でしょう・・・
図を見れば分かるように、このふたつのパターンの違いは強弱です。
前者は全く同じ強さで叩いているのに対して、後者は強弱を付けています。
このような強弱の「揺らぎ」が「ノリ」を感じさせるひとつの要因になっているのです。
では次のパターンはどうでしょうか?
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メロサンプル6a3 |
このサンプルでは強弱はついていますが、一定の周期で揺らいでいる訳ではないので、「パターン」として認識できません。
パターンの認識できないものでも実はリズム的な「ノリ」自体は存在するのですが、パターンが掴みづらい演奏では決して「ノリやすい」とはいえません。
言い換えれれば、「ノリ」を感じるには、ひとつに「パターンを認識できる事」も大事なのです。
それでは今度はドラムパターンに強弱をつけてグルーブの違いを感じてみましょう。
まずは、次の3つのサンプルを聴き比べてみてください。
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リズムサンプル6b1 |
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リズムサンプル6b2 |
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リズムサンプル6b3 |
違いが判ったでしょうか?
6b1は強弱を付けていない平坦なパターンです。これでは面白みはありませんね。
6b2は4拍表にアクセントを置いています。特にハイハット(先のサンプルで聞いた音)に注意して聴いてみてください。
6dのサンプルに比べてずっと音楽的でノリも出ているのが分かると思います。
6b3は8分音符裏にアクセントを置いたものです。
やはりノリは感じられますが、6b2のサンプルとはまた違ったノリになっているのが分かると思います。
このように強弱を付ける場所によってもノリは変わってくるのです。
グループの話しになると、良く発音タイミングを前後に動かす話しになりますが、よほど慣れていない限りは、まずは4分音符や8分音符のタイミングの上に乗っている音符を前後に動かすのは得策ではありません。
ではどこを動かすか?
最初は8分音符の裏側の16分音符から始めると良いでしょう。
特に跳ねた感じのリズムを作る場合はここは非常に重要になります。
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リズムサンプル6c1 |
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リズムサンプル6c2 |
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リズムサンプル6c3 |
6c3の16分裏は、6c2に比べて微妙に手前にあります。
6c1はイーブンな16分音符によるリズム。
6c2が3連符を2:1で演奏した「完全なハネ」のリズム。
そして6c3がその中間です。さて、2番目は「跳ね過ぎ」に感じませんでしたか?
実際、ハネのリズムを作る場合3番目もしくは、2番目と3番目の中間の方が自然に聴こえるものなのです。
これは8分音符単位ではリズムはジャストで、その裏側にある16分音符のタイミングをコントロールして作っているわけです。
例えばサンバのシェーカーなどは16分音符4つの長さが異なっており、それが独特のノリを作っています。
サンプルは最初がイーブンなタイミングでアクセントのみ付けてあるパターン。
後半は各音符の長さを異なるものにして最後の16分音符を一番長くしたパターンです。
こうすると相対的に最初の音符が重く感じるのです。
これがサンバのグルーブに最も近いパターンです。
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メロサンプル6d1 |
後半のリズムは16分の2〜4つ目が16音符グリッドよりも前にずれ込んでいるのが分かります。
そしてグルーブを作るファクターとして忘れられがちなのが音符の長さです。
次のサンプルは8分音符で弾いているベースの発音時間の長さを変えたサンプルです。
聴いてみてください。
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リズムサンプル6e1 |
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リズムサンプル6e2 |
後半の方がベースが音を長めに弾いていますが、こちらの方が重く感じるはずです。
「ノリ」「グルーブ」とは、いわば一定のサイクルで繰り返すリズムや音量変化などが生み出す「揺らぎ」のことと解釈すれば良いでしょう。
この揺らぎのうち心地よく感じるもの、または自然と体が動くような揺らぎをして「良いノリ」「良いグルーブ」と呼んでいる訳です。
ただし、「グルーブ」がもっぱら「繰り返されるパターン的な揺らぎ」に対して使われる言葉なのに対し、「ノリ」は必ずしも繰り返されるパターンに限らず広く「拍の捕らえ方」に対しても使われます。
例えば、基準とする拍に対して早めにタイミングをとる事を「前ノリ」、その逆を「後ノリ」などと呼んだり、ダウンビート(強拍、4拍子の4分音符、場合によっては8分音符)中心のビートの取り方を「縦ノリ」、アップビート(一般的には弱拍もしくは4分音符の裏拍、8分音符の裏拍)を意識したリズムの取り方を「横ノリ」と呼ぶ事もあります。
縦にリズムを取るか、体をまわすように揺れるような取り方をするかと解説している本もありますが、結局はリズムのどこを感じているかと言う意味では同じ事です。
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