DSDは、ソニーとフィリップス社が開発したスーパーオーディオCD(SACD)で採用されたアナログ信号をデジタル信号に変換する方式です。広く普及しているオーディオCD(CD-DA)で採用されているデジタル信号への変換方式はPCMと呼ばれ、各サンプリング点における信号の大きさを16bitの数値で表現するのに対して、DSDはPCMとは全く異なり、ΔΣ(デルタシグマ)変調を用いて直接1bitのデジタルデータに変換し、信号の大小をパルス波形の密度(濃淡)で表現します。
DSDは原理上100KHzを超える広帯域と可聴帯域内で十分なダイナミックレンジが確保できるため、CDを超えるクオリティを実現するハイレゾ音源用のフォーマットとして注目されています。
DSDは、ΔΣ(デルタシグマ)変調器の1bitデジタル出力を直接、記録、伝送するため、PCMと比べて複雑な変換処理が不要になり、原音をより忠実に再現できます。
一方で、DSDは、様々なオーディオコンテンツの制作過程で欠かせない加工、編集作業が、その原理上からほぼ不可能という大きな欠点があります。ミキシングやマスタリング、各種編集作業で広く利用されているDAWやサウンド編集ソフトを利用するためには、DSDデータをいったんPCMデータに変換する必要があり、このような目的で開発された高サンプリングレート、高ビットレゾリューションのPCMフォーマットが、DXD(Digital eXtreme Definition)と呼ばれるものです。
DSDのサンプリングレートは、44.1KHzの64倍、128倍、256倍となる
2.8224M = 44.1K x 64 (DSD64)
5.6448M =44.1K x 128 (DSD128)
11.2896M =44.1K x 256 (DSD256)
や、ベースサンプルが48Kの64倍、128倍、256倍となる
3.072M =48K x 64
6.144M =48k x 128
12.288M =48K x 256
などがあります。
DSDをPCで扱う場合、DSDデータをPCMフォーマットのフレームに格納する DoP(DSD Audio over PCM Flames)、ASIOネイティブ(ASIO DSDモード)、ASIO DoP の3つの方式があります。
Macintoshでは、ASIOは非対応なので、Core Audio DoPのみです。また、Windows では、MMEドライバーは、カーネルミキサーを通るため、ビットパーフェクトではなく、DSDを再生できません。従って、WindowsでDoPを扱うためには、WASAPIドライバーを使用することになります。
DoPの場合、データストリームがPCMなのかDSDなのか判断するために、DSDでは16ビット(=16サンプル)のデータにDSDマーカー1バイトを(DoP1.0 では、16ビットサンプル毎に0x05 0xFA)を付加します。
ハードウェアは、このマーカーを見て、D/A変換をDSDモードにスイッチングするため、DoPのみをサポートしているハードウェアではDSD再生時に切り替えノイズが発生します。ASIOネイティブでは、再生前にDSDモードに切り替えが行えるためノイズは発生しません。ASIO DoP では、USBクラスドライバ DoP と同様ノイズが発生します。
ASIOネイティブ(ASIO DSDモード)では、DoPに比べマーカーが不要なため、2/3のデータ量で済みます。
Sound it! 8 Pro ではASIOネイティブのみをサポートしていますが、付属のINASIOドライバーを使用することに
より、ASIOネイティブ非対応のハードウェアでも、DSD再生が可能です。
(付属のINASIOドライバーは、ASIOネイティブで伝送されたDSDデータをDoPに変換してDACに伝送します。)
DSDをネイティブで扱う場合は、使用しているDAC(Digital to Analog Converter)の仕様を明確に把握しておく必要があります。
特にDoPでは、サンプリングレートはDSDの1/16(DSD64の場合176.4K)で伝送されるので、そのサンプリングレートでオープンできるDSD非対応のオーディオIFで再生すると大きなノイズになる(DSDデータをPCMとしてDA変換される)ため注意が必要です。
DSDファイルフォーマットには以下のようなものがあります。